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Selfishly

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軍豆日誌 2

――― 副官の教訓2
 『適度にストレス発散をさせておく』 


  
 ~*~*~*
 
「こちらの資料に目を通してください」
 だいぶんと板に着いてきた言葉遣いで、手元の資料を差し出す。
 気になる箇所を伝えていると、デスクの内線が鳴るので受話器を取り上げる。
「はい、マスタング執務室です。・・・少々お待ちください」
 内線の向こうから告げられた相手を確認し、ロイに視線で確認する。指で×のマークを作って見せる上司に、エドワードは頷いて受け答えを再開する。
「誠に申し訳有りませんが、マスタングは席を外しておりまして・・・。
 宜しければご用件をお伺いしておきましょうか?」
 慣れたやり取りを交わしながら、通話を終える。
 乾いた音をさせながら、ロイが拍手の物真似のようなものをして見せる。
「素晴らしい。さすがホークアイ女史の仕込だ。すっかりベテランの副官だな」
 たかが電話対応の1回でそこまで持ち上げられると、逆にお尻がむず痒くなるのだが、―― 褒められて嬉しい気がしないはずもない。
「・・・・・そんな大層なことじゃないって」
 照れながらそう素っ気無く返す。ロイがちょいちょいと指を曲げて呼ぶから、エドワードは何だろうと首を傾げながら顔を寄せる。
 ―― チュッ ―― 可愛い音を立てながら、エドワードの頬に突然キスを仕掛けたロイに、エドワードは頬に手を当てて驚いたように目を瞠る。
「ご褒美だ」
 楽しそうにそう言ってくるロイに、「もう」と思いながらもこれ位ならと苦笑で収めたのだった。

 で、何故それからこんな状況になっているのかと云うと・・・。
 まぁどんな動物も同じだ。1度甘やかされると、次も調子に乗ってくるものなのだ。
 膝の上にエドワードを座らせて、嬉しそうに書類に目を通している馬鹿には一体どんな薬を付ければ良いのか・・・。
「―― 俺が仕事出来ないんですけど?」
 がっちりと片腕を腰に回された状態に不満を訴えても、ロイは機嫌よく笑って。
「ここで一緒に確認すればいいだろ? 一石2丁じゃないか]
 全く引く気がないロイの態度に、エドワードもこれで業務が捗るならと渋々我慢し、座り心地が良くない場所で決済された書類をチェックしていく。
 暫くは気にしないようにと耐えていたが、どんどんと違和感が酷くなるのに耐え切れず、ロイに抗議をして訴える。
「ちょお! ソレ何とかならないのかよ!」
 さっきからゴツゴツと当たって気持ち悪いわ、妙な位置に触ってむず痒い感覚が起きるわで、とても落ち着いて仕事に集中が出来やしない。
「仕方が無いだろ。これだけ傍に居るんだ。反応しない方が男としてどうかと思うぞ?」
 平然と威張って言う様な事か! 心の中で悪態を吐くと、確認の終った書類を持って立ち上がる。
「―― 何とかしてくれないのか? 君は私の恋人だろ?」
「お生憎様! 就業中は恋人時間じゃ有りません! 副官業務遂行中です」
 きっぱりとそう断わると、ロイがむっとした表情をするが、エドワードは構わず手に入れる物を入れ終わると部屋を出て行った。




 :::

「エド、何か憔悴してるよな・・・」
 食堂で司令部のメンバーと食事に出ると、エドワードの前に座ったハボックが心配そうに話掛けてくる。
「やっぱり副官業務と、通常業務じゃ無理が有るのか?」
 目の前に大盛の皿を数個並べて平らげながら、ブレダも尋ねてくる。
「え・・・? あ、ああ、別にそれは然程大変でも無いんだけどさ」
 引継ぎの時は大丈夫なのかと危惧を抱かされたのだが、いざ始めてみれば然程加重でもなく、何とかこなせる範囲なのだ。
 ――― 問題はそれじゃなくて、まさか上司のセクハラに
       手を焼かされている・・・なんて、言えないよな。

 どこで調教 もとい、築く関係を間違ったのか、どうにもホークアイの時のように上手く行かず、やたと振り回されてばかりの気がする。
 う~ん う~んと頭を捻っているエドワードの周囲の者は、そんな複雑な心中を察する事無く会話を続けている。
「けど、よくやってるよな、エドもさ」
「ああ。俺はさすがにお前でも、ちょっと負担が大きすぎるんじゃないかと危ぶんでたんだがな」
「いやいや、よくやってるよ。まだ業務に遅滞を出したことないだろ?
 それだけでも凄いことだぜ」
 皆の手放しの賞賛に、さすがに気分は浮上してくる。
「・・・や、皆の協力のお蔭だしさ」
 照れて頭をかいていた手が、次の言葉でピタリと止まる。
「それに准将も、あそこまで自分で出来るとは思ってなかったぜ」
「ああ、あれだけ出来るなら、前からやってれば良いものを」
「いや・・・根がさぼり魔なとこ有るからな」
 違いないと笑い合う面々に、エドワードは呆気に取られたように見つめる。
「え・・・? それって、どういう・・・」
 怪訝にしているエドワードに、メンバーが不思議そうにしながら話を続けてくれる。
「どうした? 准将、随分助けてくれてるだろ?」
 エドワードの業務の半分は皆に振り分けてくれているし、今まで副官に任せていた仕事内容も、せっせと自分で片付けて行ってる。
 そう話す仲間達の言葉に、エドワードは頭を殴られた気がした。
 ――― 考えてみれば、当たり前だったのだ・・・。
 新人の自分がしゃかりきになってやったとしても、その程度で手に負えるようなわけがなかったのだ。
 いい気になっていた自分が急に酷く恥かしくなって、先ほどまで浮上していたテンションは、ぺしゃりと地面に叩き落されたのだった。



 が、自信を喪失したからと、止まってくれも待ってもくれないのが現実だ。せめて自分に任された分だけでも、きちんとこなして行きたいと思いつつ、時間に追われる様にして仕事をこなして行く。


「この書類は最重要課題で、急いでもらえるようにお伝えしといたじゃないですか!」
 急に舞い込んだ案件だったから、時間の余裕が無い中を捻じ込んで入れたというのに、ロイは残り1時間を切っても取り掛かる様子を見せないのだ。
「そうは言っても、朝からずっと急かされてばかりだ。いい加減嫌になっても仕方が無いだろ?」
 確かに昼食も返上させて掛からせている。が、この案件だけ終らせてもらえれば、食事を取ってもらっても一休みして休憩を入れてもらってもOKなのだと、頼むように説明する。
(仕事はやって当たり前なんだよ!)と怒鳴りつけてやらせたいところを、ぐっと我慢する。
「・・・なぁ、ロイ。もう少しだけ頑張ってくれよ」
 機嫌を取るように頼めば、ロイは気難しい表情で口をへの字にして見せる。
 ――― やば・・・、マジ機嫌を損ねてるな、これは・・・。
 確かに今日だけのことではないのだ。エドワードに余裕が無い為、
ロイへの対応も風当たりきつくなっていたのは判っている。家に戻ってもけんもほろろにあしらってたから、ロイの機嫌が良くなるはずも無い。それでも不慣れなエドワードをカバーする為に、脱走する事もなく不満1つこぼすでなく取り組んできてくれていたのだから、感謝の言葉1つくらいは伝えるべきだったのだろう。
 が、ロイの忍耐もどうやら限界を超えてしまったようで、こうなると少々厄介な相手なのだ、ロイという男は・・・・・。
「――― 気分が優れない。少し休ませてもらう」
 淡々とそう言ったかと思うと、エドワードに退出するように身振りだけで指示してくる。ロイのそんな冷淡な態度に、エドワードの背に冷や汗が伝う。上官の命令は絶対だ。が、ここで退出してしまっては、絶対に期限はオーバーする事になるだろう。どうすべきかと悩んで戸惑っていると、出て行かないエドワードの代わりにロイがくるりと椅子を回転させ背を向けてしまう。
 ――― 部下として無理なら、手立ては1つ・・・。
「なぁ・・・機嫌直してくれよ? 悪かったって。これからはちゃんと気をつけるからさ。なぁ、ロイぃ」
 自分の態度が悪かった自覚は有るから、エドワードは誠心誠意、ロイの恋人として謝った。
「――― 君はそればかりだ。今度、今度と、どれだけ引き伸ばせば気が済むんだ」
 そう言ってくる声が冷ややかで、彼の腹立ちの度合いがひしひしと伝わってくる。日頃、物分りが良い方だからエドワードもついつい、彼のことを蔑ろにする傾向がある。それでもエドワードには甘い彼だから、滅多なことでは文句を言わないのだが・・・・・。
「ごめん・・・・・。なぁ、どうすれば機嫌、直してくれるんだ? 直してくれるなら、俺何でもするからさ」
 困り果てたエドワードが、その言葉を口にした瞬間、ロイが背を向けた向こうで拳を握ってガッツポーズをしていたなんて・・・、判るわけはない。若くして高官の地位に就いているのだから、ポーカーフェイスは勿論、演技だってお手の物だ。
「―――――― 本当に? 何でも?」
 疑心に満ちた声でそう繰り返し聞かれ、エドワードは机に乗り出して答え返す。
「本当に! 俺が出来ることなら!」
 必死になって肯定するエドワードの言葉に、ロイは向き直ってにやりと笑って告げた。
「じゃあ、証明してもらおうかな?」


 :::

「ほら、早くしないと時間が来てしまうぞ?」
 腰元にある髪を玩びながら、意地の悪いことを伝えてくる。
 口が空いていれば、反論の1つや2つ飛び出しただろうが、現在エドワードの口内は多忙中だ。
「・・・・んふ、ふぁい・・・」
 口一杯にロイのモノを頬張っているから、返した言葉は不明瞭だ。
 忙しげに舌を動かし、やたら張り切って大きくなっているソレを苦労しながら舐めていく。

 証明しろと言うから、何を?と首を傾げて見せれば、ロイは上機嫌で自分の前を寛げて見せたのだ。呆気に取られて固まっているエドワードに、達かせれば残りの時間で決済をしてやろうという、とんでもない申し出に必死に首を振って拒否をしたが、「やっぱり嘘か」と言われてしまえば、弱みが有る分断り難くなってくる。
 後でならと譲歩を頼み込むが、「君の後では信用ならない」と切り返され、エドワードは苦慮の末、膝を付いたのだった。

 幹の裏側を舌で押し上げるように辿り、軽く歯を当てて刺激を与えてやる。両手を使って丹念に袋を揉んでやれば、濃厚な雄の匂いが鼻孔に充満してくる。ゆらゆらと腰が動き始めているから、もう少しで達かせられるはずだ。片手を袋から幹を扱く方に移し、舌で先端を抉るように差し入れれば、「うっ・・・」と呻く声が上方から聞こえる。
 よしっと内心で気合を入れて、両の掌で包むようにして持ち、摩る速度を上げる。水音と摩擦音が忙しなく上がる中、エドワードの髪に差し入れていたロイの指に力が籠もってくる。先端をきつめに吸うと、ジュッと音をさせて口の中一杯に苦い味が広がった。
 ロイがエドワードの後頭部を掴む様にして手前に引き寄せると、先端が最奥に当たる。更に奥へと入り込もうとするかのように、ロイが腰を突き入れだすから、エドワードは息も碌に出来ない苦痛に耐えて、タイミングを合わせて喉の奥で締め付けてやる。
 数回、必死にそれを繰り返すと、漸くロイのソレが発車寸前の膨張をした。
 ビシャリ! と顔に被った熱に、エドワードは茫然となる。
 一体、何が・・・と思っている間にも、パタパタと飛沫が飛んできては顔から顎を伝ってエドワードの軍服を汚していく。
「ふぅー・・・。―――――― ああ、済まない。タイミングが悪かったようだ」
 今だ固まっているエドワードに、心の籠もらない謝りを伝えて、ロイはエドワードの顎を捉えて覗き込んでくる。
「・・・好かったよ。随分、上達したな」
 ハンカチを取り出して、エドワードの顔や胸元を拭ってやりながら、ロイは悪びれない様子でそう告げると、褒美のように驚き固まっているエドワードの唇にキスを贈る。
「さぁ、後30分も無い。急いで片付けてしまおうか」
 今だ惚けているエドワードをそのままに、ロイは上機嫌にデスクの書類に目を通し始めたのだった。


 それから数十分後、疲れ果てたような表情のエドワードが執務室から出てきたのを、司令部のメンバーが見ていた。手にはしっかりと封筒が握られていたから、決済を貰うのに苦戦したのだろうと、それ以上特には気に留めなかった。

 その日はそれ以上事件も起こらず穏やかで、珍しく上司と副官が揃って定時に退出して行き、その姿に今日も無事に1日が終ったなぁと、残った者達は和やかな笑みを交し合いつつ見送ったのだった。



 
  


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